2008年8月31日日曜日

特権

夏服を着た十代の男の子と女の子が 
コーヒーショップの奥の方にならんで座っていて 
思わずしばらくのあいだ見入ってしまったのだが、 
なぜ見入ってしまったかというと 
それは 
男の子がものすごく女の子に触りたがっているのが 
ものすごくわかったからだ。 

ちょっと髪の先にふれたいとか 
ちょっと手と手をあわせたいとか 
そういうレベルじゃ全然なくて、 

もっと致命的に触りたがっているのが 

なんでそんなことわかるのかって言われても 
そんなことはわからないんですが、 
とにかくまあわかっちまったわけです。 

何がいいって 

そのやせっぽちな男の子が 
そのちょっと眠たそうな女の子に触りたいと 
そんなにも 
こっちにありありとわかってしまうほど願っているさまが 
全然 
まったく 
いやらしくないということが、たまらなくよかった。 

もちろんその男の子がもともと持っている資質によるところも 
大きいとは思うけれど 
まあおそらく 
それこそが十代の特権てやつなのだろう 

たとえばあと十年たって 
あんなにあからさまな彼の願望が 
あんなにキュートに見えることなんて 
ありえないと思う 
いや、ありえるのかもしれないが個人的には考えられない 

とにかく、その時その女の子に 

「隣のそいつ、すげえ触りたがってるぞ!」 

って、伝えてやりたいなあと思った 
大きなお世話だ 
第一そんなこと 
言われなくてもわかってるよなあ 
いやわかってないか 
いやいやわかってる 
いやいやいやそんなことどっちだってどうでもいい 


ああうらやましい 
でも別に、戻りたくはない 
眺めているのがいいのだ