2014年11月13日木曜日

三十年

長男が寝るのを頑強に嫌がって床をごろごろしているのに呆れて
「どうして子供は寝るのを嫌がるかね、こっちは一日寝てたいよ」
とひとりごちたら、
むかし父がそっくり同じことを
そっくり同じ調子で言っていたのを思い出した。
叱られると恐れて三十年前の私がごろごろをやめると、
見上げた父はしばらく目を合わせたあと、少し頬を緩めて笑った。

三十年後、長男は体をねじらせたまま、
思いつめた顔をしてこちらをうかがっている。
おかしくて笑うと、安心したように
また台所のほうへ転がっていった。