2016年7月7日木曜日

Zabadak

「ザバダック」と耳にするだけで、
京都での大学時代を思い出す。
いわゆるヒット曲は全く持たないバンドだったが、
九十年代前半、
左京区東一条界隈のいろんな音楽サークル周辺で、
とにかく流行っていたことを憶えている。

合唱団の先輩に「遠い音楽」を貸してもらって気に入り、
四条烏丸の十字屋で、
当時の新譜だった「桜」を買った。
耽溺した。
はじめは上野洋子の歌声が目当てだったが、
次第に吉良知彦のギターに興味を引かれた。
日比谷野音のライブのVHS、
手元のアップを擦り切れるぐらい再生して
弾きかたを覚えた。

今朝、その吉良さんの訃報に接して、
自分でも意外なほどの衝撃を受けた。
昼休み、職場の窓際で
iPodのプレイリストを久しぶりに聴いた。
五つの橋、アジアの花、光の人、そして遠い音楽。
目の前のぎらぎらした商業ビルが現実感を失い、
二十年前の木陰の湿り気が蘇るように感じられた。
サークルボックスの入り口に座って
覚えたばかりのイントロを弾くと、
隣の同級生がひっそり声を合わせてきた。

それはまさに青春の1ページで、
それなり時は経ったにせよ、
今の自分と確かに地続きであると、
これまでも感じられていた記憶だった。
しかし吉良さんが別の世界へ旅立ったのと同時に、
その思い出もまた、
容易に辿れない別の世界へ遠のいてしまったような気がした。
それが悪いことだとは思わないけれど、
遠ければ遠いだけ、やはり寂しい。

56歳。
ロンドンパンクの人じゃあるまいし、
もっと長生きしてほしかった。
ご冥福をお祈りします。