2016年11月3日木曜日

車窓

祝日の午前、用事も無かったけれど
長男と二人で外へ出た。
最近はすでに次男が精神発達の面で
長男を追い越しつつあり、
親のほうでも弟と会話する時間が増え、
それが言葉をうまく扱えない兄を
悲しませているきらいがあるので、
何とか機嫌を直してもらおうと思ったのだ。

行くあてもなく下りの京王線に乗って、
落ち着いたところで
「はまざきーあおくん」と声を掛けた。
「はーい」と答えて彼が手を挙げる。
たったこれだけのこと、
出来るようになるまで随分練習したなと思いながら、
息子可愛さがふつふつとこみあげ、
つい何回か繰り返してしまう。
はまざきーあおくん、はーい。

するとそれまであちらを見ていた青が振り返って

「はーざきーぱぱー」

驚いた、虚を突かれたが、
何とか「はーい」と返した。
手は挙げ忘れた。

「すごいねー初めてだねー。
 はまざきーあおくん」
「はーい。
 はーざきーぱぱー」
「はーい」

ああ感動させてくれるなあ、
でもまあ泣きはしねえよと外を見たが、
やっぱりぐっと来て口を押さえた。

もちろん嬉しい、でもそれだけじゃない。
車窓越しの景色のように、
時が過ぎていくことの強さを思った。