2009年10月24日土曜日

幼馴染

幼馴染が肺癌で死んだ。

彼女は大阪の外語大学を出たあと、上京して役者をしていた。
一般的な意味での成功を収めることはなかった。
時々、CMや深夜の通販番組などで目にすることはあったが、
その役者としての仕事を、ちゃんと見ることはこれまで無かった。

昨日の夜勤中、ネット検索に彼女の名前を打ち込んでみると、
妻が好きな刑事ドラマシリーズのある一話にクレジットがあった。
帰宅して話すと、
特にお気に入りの回だという。
この夏の再放送を録画していたものを見せてくれた。


国会議員が遺体となって発見される。
騒然とした議員事務所で立ち働く秘書たちの中に、
彼女がいた
初回放送の年月日からすると、年齢は二十六、七のころだ。
出番はわずか2カット、台詞は一言だけ、
その回のメインである室井滋氏が事務所に入るなり彼女に聞く。
「誰が来てるの?」
そして彼女
「警察の方です」


死んだと聞いただけなので、どうも実感がわかない。
ただ、
三十五で肺癌で死ぬということを、自分の身に照らしてみると、
どうにも受容しがたい
悔しくて悔しくて、悔しくてやりきれない、
それだけだ。

とはいえ、
彼女の姿の刻まれたものを目にすることが出来て、
少し気持ちがほぐれるように思えたのは確かだ。
たった2カット、たった一言の台詞を
彼女は本当に一生懸命、一生懸命やっていた。


さようなら
大人になってから、一度会えばよかった。