回転寿司のボックス席、
長男と次男がそれぞれ、レーンの脇に座った。
通路側から奥を見て、左に長男、右に次男だ。
すると長男が「あ」と立ち上がり
「マチガエタ。ダイクンカワッテ」
「イヤだよ」
と言って次男は靴を脱ぎだす。
「どっちでも一緒でしょう。代わってあげて」
「イヤだよ」
「ダイクンカワッテ」
「イヤ」
「橙、青は自分をゆずれない。お前がゆずってくれ」
次男がハアッと溜息をつくと、
テーブルの下に潜り、反対側から出てきた。
空いたところに長男が座った。
次男はしばらく俯いていたが、
顔を上げてこちらと目が合うと、だんだん泣きっ面になってきた。
「おいで」と通路に連れ出し、
待合用の椅子に座って膝へ乗せると、私の胸に顔をうずめて
「代わるのイヤだったよう」
と言って泣いた。
右に座るか左に座るかは小さなことだが、
この先何度「お前がゆずれ」と彼に言うのだろうと、
その物思いが頭に満ちて
「わかるよ。ごめんな」としか言えず、背中を撫でていた。
ちょっと落ち着いてきたので
「たまご食べる?」と訊いたら、顔を押しつけたまま、ぐっと頷いた。
それから起き上がって
「ポテトは?」と訊いてきた口もとは、少しだけ笑っていた。
「食べようぜ」と言って、二人で席へ戻った。