2020年2月13日木曜日

回転寿司

 回転寿司のボックス席、
長男と次男がそれぞれ、レーンの脇に座った。
通路側から奥を見て、左に長男、右に次男だ。
すると長男が「あ」と立ち上がり
「マチガエタ。ダイクンカワッテ」

「イヤだよ」
と言って次男は靴を脱ぎだす。
「どっちでも一緒でしょう。代わってあげて」
「イヤだよ」
「ダイクンカワッテ」
「イヤ」
「橙、青は自分をゆずれない。お前がゆずってくれ」

次男がハアッと溜息をつくと、
テーブルの下に潜り、反対側から出てきた。
空いたところに長男が座った。

次男はしばらく俯いていたが、
顔を上げてこちらと目が合うと、だんだん泣きっ面になってきた。
「おいで」と通路に連れ出し、
待合用の椅子に座って膝へ乗せると、私の胸に顔をうずめて
「代わるのイヤだったよう」
と言って泣いた。
右に座るか左に座るかは小さなことだが、
この先何度「お前がゆずれ」と彼に言うのだろうと、
その物思いが頭に満ちて
「わかるよ。ごめんな」としか言えず、背中を撫でていた。

ちょっと落ち着いてきたので
「たまご食べる?」と訊いたら、顔を押しつけたまま、ぐっと頷いた。
それから起き上がって
「ポテトは?」と訊いてきた口もとは、少しだけ笑っていた。
「食べようぜ」と言って、二人で席へ戻った。