2020年8月10日月曜日

伝え方

日曜、電車での外出の直前、長男の青が「パスモない」と言う。
普段玄関に置いてある小児用交通ICの、ケースはあるのだが本体が無くなっていた。
みんなで探していると、次男の橙が「あったよ」と言って持ってくる。
妻が「どこにあったの」と訊くと、「おもちゃ棚の中」と答えた。

ああ、と思って
「橙が隠したの?」と訊いたら
「違うよ」と言うけれど、こちらに背を向けている。
「こっちを向いてよ。橙が隠したの?」「違うってば」
みるみる声が震え、泣き出してしまった。

怒り飛ばしてやろうか、という衝動が沸き上がったが、思い直した。
これは彼の「言葉に出来ない声」なのだから、
言葉にするやり方を教えて、
最終的には、自分から言葉として発することが出来るように、
リードしてあげたいと思ったのだ。

「ねえ橙、パパは怒っていないし、怒らない。にいにと同じカードが欲しかったか」
頷く。
「そうだな、小学生になったもんな。作ってあげるよ。こっち向いて、こっちおいで」
抱きついてきた。
「でもね、こういう伝え方はしないでほしい。
 いちばん悪いやり方だと思う。
 何かしてほしいことがあるなら、言葉で伝えてくれ。
 いいよって言うこともあれば、ダメだよって言うこともあるけど、
 パパもママも絶対に、うるさがったり嫌がったりしないから」

甘すぎるだろうか、という考えも頭をよぎる。
ただ、自分が子供だった時、
同じような場面でかけてもらいたかった言葉ではある、とも思った。
そのあと行った仙川のロイヤルホストで、
次男は好物のパンケーキを、嬉しそうにたらふく食べた。