2012年10月1日月曜日

家族

妻は五人きょうだいの長女である。
妻の母には妹が一人いて、彼女も四人の子を産んだ。
つまり僕の義理の祖父には、九人の孫がいる。

彼は二年前、僕の息子が生まれた日に亡くなった。
初めての曾孫だったが、会うことはなかった。
その三回忌となり、長野立科の墓を参った。
墓は本家の近く、稲穂の中にあって、
よく手入れされた風よけの灌木に囲まれていた。
代々の血族が眠る大きな墓だ。
初代の命日は天保年間だった。

母の妹は若くに病を患って亡くなってしまい、
彼女の夫は再婚した。
だから法事に来るのは、
四人の子どもたちとその父親、
そして、その後添いの奥さんだ。
妻の実家の人たちは全般、酒を飲まないが、
この奥さんは滅法強い。
僕も強くはないが好きなので、
真っ昼間から二人だけ、ビールをこんこん飲む。

彼女と夫、そして四人きょうだいの長男が
その日のうちに東京へ帰るという。
僕も次の日が仕事なもので、
妻と息子を残して戻る予定だったから、
車に同乗させてもらうことになった。
長男が運転、父親が助手席で、奥さんと僕が二列目だ。
四人のうち三人は、法事の主役と血のつながりが無い。

関越道の横川サービスエリアで、
奥さんが「晩ごはんに」と、名物の釜飯を買ってくれた。
自宅に戻って食べるとつくづく旨く、
妻に電話で話すと
「その釜飯、
 子どものころおじいちゃんと出かけたとき、
 いつも食べさせてもらったものよ。
 懐かしい」


不思議なものだなと、よい気持ちがした。