彼と同い年の、普通の子供たちを嫌でも目にする。
通い始めた幼稚園の迎えのバスを待っている。
親と手をつないで。
長男に目をやると、道沿いの住宅の門扉をいじっている。
門扉にこだわりがあり、一軒ごとに取手を回さねば気が済まない。
止めると暴れる。
次の門扉へ移る時、右手を握ろうとしてみた。
払いのけられた。
昼前の公園、長男が遊ぶすべり台に、幼稚園児が二人走ってくる。
真新しい水色の帽子だ。
階段を勢いよく上るが、てっぺんで息子を先頭に渋滞する。
「ねえ、早くすべってよ」
そう言われても動かない。すべり台の流儀を理解していない。
母親たちが怪訝な顔つきになる。
「すいません、うちの子、障害があって、言葉が無いんです」
「ああ、そうなんですか。だいじょぶです」
しかし子供たちはすぐに焦れて
「ねえママー、この子へんだよー」
急いで
「ごめんねー。ほら、こっちだ」
抱きかかえて無理やり降ろし、その場を離れた。
「すいません、失礼しました」
福祉センターの貼り紙を頼りに、
児童発達支援デイサービスの見学に行った。
同年代の障害児を目にすると心が落ち着く。
そして私は較べる。
あの子はうちの子より重そうだ
あの子はうちの子と同じくらいか
あの子は
あの子はあの子は
帰り、息子は自転車の後ろの座席で
うおおおう、うおおおうと大声を上げている。
すれ違う人の視線を感じる。
今のところ、彼が発する唯一の声だが、
喜んでいるのか怒っているのか分からない。
まだ四月の半ばというのに、
午後の日射しは初夏のようだ。
飲みたい、飲んで寝てしまいたい。