2020年5月1日金曜日

彼方なる歌に耳を澄ませよ

 座右の書、アリステア・マクラウド「彼方なる歌に耳を澄ませよ」

アリステア・マクラウド(1936-2014)は非常に寡作、
自分が育ったカナダ東端ノヴァ・スコシア州ケープ・ブレトン島の
スコットランド系移民の話「しか」書かなかった人だ。
歴史に立脚して生きる親の人生と、それを後ろに置いていかざるを得ない子の人生。
別巻の短編集「灰色の輝ける贈り物」所収の「船」における、
子から父への思いを綴った次のような一文に象徴される世界である。

「自分本位の夢を一生追い続ける人生より、
 ほんとうはしたくないことをして過ごす人生のほうが、はるかに勇敢だと思った」
(I thought it was very much braver to spend a life doing what you really do not want
 rather than selfishly following forever your own dreams)

「彼方なる歌に耳を澄ませよ」は唯一の長編で、集大成と言ってよいだろう。
結びの一節
「誰でも愛されるとよりよい人間になる」
(All of us are better when we're loved)は、
障害を持つ長男と生きる上で、私を支え続けてくれている言葉である。